北の道35 サンティアゴ・デ・コンポステラ (北の道最終回


6月20日(月)メノールのアルベルゲ連泊。地下のキッチンへ行ってインスタント・スープを作り、昨日、中川奥さんから頂いたゆで卵をひとつ入れる。あとパンとOIKOSヨーグルト。中川夫妻もやってきて、簡単に朝食を取ってからコルーニャ観光に行くそうだ。奥さんが小さな折り鶴をくれた。昨年はイーデンも貰って、大事に貴重品入れに仕舞っていたのが思い出される。折り鶴が折れると海外に行ったときに仲良しアイテムとして使えるのだがなと思ってはいるが、私は中々覚えられない。代わりに持ってくるのが和風マリアカードで、これもいつも喜ばれるので嬉しい。

 A Coruñaはコンポステラから北へ凡そ70数キロか、世界最古の塔台ヘラクレスの塔・世界遺産があることで有名だ。ここからは日帰りで行ける観光地なので私もいつか行ってみたいと思っている。だが、この半月後にコルーニャの駅に降り立つことと、21日後にはコルーニャ在住の人と親しい友達になるなんてまだ想像もしていない。

 今日はここメノールのアルベルゲに連泊なので、のんびりと過ごす予定だ。連泊なんて40日前にパリでやって以来なので、宿さがしをしなくて良いだけで凄く解放された気分になる。用事がある訳でも歩く必要もないので取りあえず行くところといったらカテドラルしかない。必要なもの一式を持って出かけて行く。

 カテドラルの祭壇後ろにあるサンチャゴ像の近くには、普段は見張りがくっついていて写真が撮れないのだが、今日は朝早いこともあって誰もいない。なので他の人たちもサンチャゴ像に抱きついて記念写真を撮っていたので私もカメラを渡して撮って貰う。やった、こんなチャンスは滅多にない。普段は撮れないこの中を何枚もカメラに収めておく。10時を過ぎるとこの中はごった返して長い行列が出来てしまうが、今なら並ぶことなくどこでも見ることができる。昨日は長い行列を見ただけで諦めたヤコブ(サンチャゴ)の棺へお参りする。

 オブラロイド広場に出てきたら、合気道二段のドイツ人がいたのでカタコト英語で暫くのあいだ暇つぶしをして、マルテンにはまだ会えていないことなどを伝える。今日もへんてこなズボンと素足にサンダルを履いている。目がすっごく鋭いので、007に登場する悪役がピッタリのようだが渋くていい人です。

 日本人ツアーと思われる一団がやって来たので話しかけてみる。10日間のツアーで、全部高級ホテルのパラドール泊まりだそうだ。贅沢には興味がないのでちっとも羨ましくないけど、この人は誇らしげに鼻の穴を脹らましている。そのパラドールはこの広場に面した所に堂々と建っていてオーラを発している。今日はそこの無料ランチを食べる計画があるのだ。これは毎日、朝昼晩と巡礼者のみ10名限定で賄い飯を食べさせる伝統が続いているもので、昨年はチャレンジできなかったので今年こそはと闘志を燃やしている。1時間前に並ぶと食べられるそうなので、それよりも早めの10時半に集合場所に行ってみる。扉の前にご婦人が3人いたので、ランチかと聞いてみたが違うそうだ。暫くしたらこの人たちはホテルの通用門から入って行き出したので再度聞いても違うと言っているので従業員のようだ。

 11時になったら二人ペリグリノがやって来たので、ランチを食べに来たの?と聞いたらそうだって。やっと仲間ができたので安心する。初めてのことなので、ここで待っていればいいのか別の所なのかがハッキリしなかったのだ。

 30分前になったらやっと6人に増え、5分前になって二人追加された。意外や、あまり皆さん関心がないようで、時間になるのに定員割れしている。12時になるとホテルの人が門の外から手招きするので通りに出て行くと、ホテルの正面玄関から入っていいらしい。へー、タダ飯目当てなのに客が入れる玄関から入っていいんだなと意外だった。裏口からコソコソと入るものとばかり思っていた。ゾロゾロと付いて行き、初パラドール入場だ。みんな田舎者よろしくキョロキョロと見まわしているのもご愛敬だ。

 ずんずんとホテルの奥まで入って行き、厨房奥でトレイと食器を自分で取り、コックさんがカボチャのスープやメイン料理と思われる焼肉とマッシュポテトが載っている皿を一人一人に配ってくれる。近くにある食べ物も適当によそっていいらしいのでパンや野菜・ベーコンなどを適当に載せる。私は最後になってしまったので品切れになった物もあった。ワインと水を全員分で2本ずつ貰い、これを持って下の階にある専用の小さい部屋で食べるようだ。ワインは前の人たちが注ぎ過ぎて私に回って来る頃には幾らも残っていなかったので悲しい。これらの流れは前にも食べたことのある経験者が教えてくれたので淀みなく進むことができた。

 どれも美味しくて、賄い飯と言えどさすがパラドールの料理だと感心する。前に座ったご婦人はワインが気に入らないのか、水で薄めたり隣のご主人に飲ませたりしている。あんたが沢山注いだお陰でワインの残りが少なくて残念がっている男がここにいるんだが。
 スーパーがない時、たまにバルで食べる定食はカサマシのフライドポテトで腹をいっぱいにするようだったが、ここでは美味しい料理だけで腹いっぱいになったので幸せ。食べ切れなかったパンはナプキンに包んで持ち帰ることにする。他のみんなも同じことをしているので、それでこそペリグリノだ。食べ終わった食器はまた上の厨房まで戻すのが決まりだ。みんな外に出る前にカメラでパラドールの中を撮りまくっている。誰しも考えることは同じだ。

 広場に戻ると北の道で何度も一緒だった髭のドイツ人と再会する。もうここで4泊しているそうで、明日やっとドイツに帰るらしい。海外からやってくるペリグリノは誰でもキチキチの旅程は組まずに予備日を設けている。ケガしたり病気になる可能性があるからだ。帰りの飛行機の日は決まっているので、ここコンポステラを調整地にしているから日程が余るとここで何泊もすることになる。公営アルベルゲは1泊だけが決まりだが、そのためここだけは公営のメノールでも何泊してもオーケーだ。

 この広場でもアンケートを取る女の子がいた。え、これって良くあるアンケート詐欺でしょ!?よくこんなとこでやるなと呆れる。日本では路上アンケートでサインしても大したことにならないが、海外ではサインは実印と同じだ。文面を良く読まずにサインしてしまうと「サインしたんだから寄付しろ」と言われても仕方がない。それも1ユーロとか5ユーロなんて金額じゃなくて、もっと高額を要求してくるらしいので知らない人は注意が必要だ。この広場には市庁舎が面していることもあり警官がいるのだが注意も何もしない。物売りや物乞いもあちこちにいるし、ここでは何をやってもいいらしい。

 アルベルゲに戻ってシャワー・洗濯してから買い物に出かけて行く。歩いて10分の所にスーパーがあって、昨年も何度か利用した店だ。いつも程度の買い物をしたら9.10ユーロだって!?これボラれてないかぁ?普通、この程度なら高くても7ユーロ程だろう。この店にはもう来ない。言葉が不自由な外国人と見ると、こういう商売をする店がたまにある。

 北の道はこれでジ・エンド。明日からはポルトガル人の道が始まる。朝が早いのでまごつかないように詳細な予定を立てて行動することにする。

1, 5時起床       2, 5時半メノール出発      3, 5:50サンチャゴ駅
4, 6:17駅発車    5, ビーゴで1時間20分待ち   6, ポルト10:18着
7, 市内中心部まで徒歩       8, カテドラルでクレデンシャルをゲット
9, 隣のインフォメーションでスタンプと地図ゲット    10, 2時ホステルにチェックイン
11, 時間があれば黄色い矢印探し
  と、まぁこんな感じ。手間取るパッキングは今夜のうちに済ませておく。

続きは「ポルトガル人の道1」になります。